CMOSイメージセンサは、多様なアプリケーションで利用される主要な撮像技術です。しかし、その性能を制限する要因の一つに「ノイズ」があります。本記事では、CMOSイメージセンサにおける主要なノイズ(時間的ランダムノイズ、固定パターンノイズ、読み出しノイズ)について詳しく解説し、それぞれの発生メカニズムと低減手法を紹介します。
時間的なランダムノイズ(Temporal Random Noise)
概要
時間的なランダムノイズは、フレーム間でランダムに変動するノイズです。光条件が一定でも画素出力が変化する原因となります。このノイズは主に以下の要因で発生します:
- フォトンショットノイズ
- ダークカレントショットノイズ
- 熱雑音(熱励起電子によるノイズ)
- 1/fノイズ(低周波ノイズ)
主なノイズ要素
フォトンショットノイズ
光子がランダムに到達するために発生する統計的な変動です。照明条件に比例して増加し、基本的に除去不可能な物理的限界ノイズです。
ダークカレントショットノイズ
光がなくても熱的なエネルギーによって電子が発生する現象です。温度上昇に伴い急激に増加します。
熱雑音
増幅回路や読み出し回路内で発生する抵抗の熱振動によるノイズです。高周波成分を持ちます。
低減方法
- 冷却技術:特にダークカレントショットノイズに有効で、センサ温度を下げることで大幅に低減可能です。
- 相関二重サンプリング(CDS):リセットノイズとともに熱雑音を効果的に除去します。
- 複数サンプリング:時間平均化によりノイズを抑制します。
固定パターンノイズ(Fixed Pattern Noise, FPN)
概要
固定パターンノイズは、特定の画素や列に特有の一定した出力偏差です。フレーム間で変動しないため目立ちやすく、画像全体に縞模様や斑点として現れることがあります。
発生原因
- 画素間の不均一性
- CMOS製造プロセスによる画素間のトランジスタ特性のばらつき(しきい値電圧やゲインの違い)
- 列読み出し回路のミスマッチ
- ダークカレントの不均一性
低減方法
- オフセット補正:オフラインまたはリアルタイムでの校正により、各画素や列のオフセットを補正します。
- デジタル信号処理:画像処理でFPNを削減(例:ブラックレベル補正)します。
- 製造プロセスの最適化:トランジスタ特性の均一化やダークカレント低減技術を採用します。
読み出しノイズ(Read Noise)
概要
読み出しノイズは、CMOSセンサの信号読み出しプロセス中に発生するノイズです。センサ性能の限界を決定づける重要な要素であり、特に低光量条件下ではS/N比に大きな影響を与えます。
発生原因
- ソースフォロワーアンプのノイズ:各画素の出力を増幅するソースフォロワーから生じる熱雑音や1/fノイズです。
- 列並列回路のノイズ:スイッチングキャパシタ(SC)回路やADCの量子化誤差が含まれます。
- バッファ回路のノイズ:センサ出力段での増幅プロセス中に加わるノイズです。
低減方法
- 高ゲインアンプの使用:信号を強化してノイズの影響を相対的に低減します。
- 高精度ADC:量子化誤差を減らし、データの精度を向上させます。
- アナログCDS:リセットノイズや低周波ノイズを削減する回路設計を行います。
まとめ
CMOSイメージセンサにおけるノイズは、性能向上の妨げとなる重要な要因です。しかし、以下の方法を用いることで効果的に低減できます:
- 冷却やサンプリング技術の導入
- 信号処理の最適化
- 回路設計の改善
これにより、時間的ランダムノイズ、固定パターンノイズ、読み出しノイズの低減が可能となり、画像品質が向上します。これにより、より幅広い用途での利用が可能になります。
コメント